ハニー、俺の隣に戻っておいで

そこで、彼女は「わかった、いいわ」とすんなり頷いた。 どのみち、そんなに悪い話ではない。

二人は歩きながら親しげに話したが、 実際にとめどなく喋っていたのはどちらかというとジェームズで、ニーナは黙ってただ聞き手に回っていた。

そして、ジェームズもミシェルと同様おしゃべりが過ぎるということに気づいたのだった! 幸い、ニーナは長いことミシェルと付き合っていたので、ジェームズのとりとめの無い話もイライラせずに聞いていることができた。

そして、ミシェルの普段の親切に報いるためにも、ジェームズに「ミシェルと何があったの?」と聞いてみることにした。

実際、ニーナはまだジェームズとミシェルの関係を理解できずにいるのだ。

インターネットを通じて恋に落ちたと聞いたのは漠然と覚えているが、ジェームズがいくど他の女性と浮名を流しても、ミシェルは別段、怒りや嫉妬の兆しすら見せないという事実がニーナを混乱させていた。
本当に彼のことが好きならそんな風にしてはいられないはずだ。

けれども逆にジェームズが気に入らないのなら、なぜミシェルはいつも花や月、夕日を一緒に見に行って楽しかったなどというのだろう?

ミシェルの名前が出ると、ジェームズは不安で頭がチクチクするのを感じる。 あんな真面目な子に会ったことはかつてなかったのだ。

「同じコンピュータゲームをやっていて、ゲームの中で付き合っていたってだけだよ」ジェームズは不当に誤解されている気がして白状した。

コンピュータゲーム?

「じゃあ一緒に夕日や花や月を見たっていうのも……」

「あれはゲームの中でカップルが達成しなきゃいけないミッションなんだ」とジェームズが弱々しく説明する。

それを聞くと、ニーナはようやく腑に落ちた様子でほっとし、したり顔で頷いた。