「苦いなぁ、たばこって」
『んなの、そりゃそーに決まってんじゃん
お子様にはまだはえーよ』

2人の会話は儚く曇り夜空に消えた。
恋も愛もなにも。興味本位。
遊び相手にするには少々もったいない気がするようなイケメンだと思った。
煙をふーっとふかすあなたの横顔から目が離せなくなったのは認めよう。
彼はダメだ、と危険信号は働く。
それでも止まらなかった、いや、意識的に止めなかったのかもしれない。
白くて儚いその煙を両手で包んで歯に噛んでみせた。

「おにーさん、遊ぼうよ」
『は、誰がお前みたいなガキとやるかよ』
「おにーさん、欲求不満でしょ、我慢は良くないと思うけどな〜」

だなんて。汚していいよ。苦くしていいよ。って許したのにな。上から目線にも程があるか。
まぁ、許したからさ許してよね。
それでも彼はわたしに一度たりとて触れなかった。

『もー帰れ、お前。』
「分かった。名前教えてよ。そしたら帰るから。」

名前なんか聞いたってもう会うことなんてないかもしれないのに馬鹿なわたし。

『◯◯』
「え、?」
『だーからぁ、俺の名前、◯◯』

◯◯か。
頭の中で反芻して、なんだか痛くて、言葉にするのをやめた。
その代わりに、
「わたしねハタチなの。おにーさんが思ってるほどお子様じゃないんだよ」

って、
艶っぽい笑顔と共にあなたのもとに添えて帰った。

あぁ、彼、本当に綺麗なこと。
私としたことが小失態。
ほのかに霞むその苦さにあなたをみてしまったのだから。