朝、小鳥たちの囀り声と共に心地いい声が聞こえる。
「セシーリア、セシーリア起きてください」
「う、うんん…」
セシーリアと呼ばれた少女は眠たそうに寝返りを打った。
「全く…」
とジャックは小さなため息をついた。
セシーリアの寝起きの悪さは毎朝のこととはいえ、どうしたものか。
ジャックはベッドから立ち上がると天蓋をそっと捲り、近くの窓を開けた。
陽の光を浴びてジャックの銀髪がキラキラと輝く。
そんな姿をぼーっと見ていると、朝の清々しい空気が一気に部屋の中へと入ってきた。
「ほら、今日もいい天気ですよ」
にっこりとジャックが言うと
「う〜…」
セシーリアは日から背を向けて、獣の唸り声のような声を上げる。
「本当に起きてください」
ジャックは再びベッドに座り、優しくセシーリアの肩を揺する。
「だってぇ〜…」
「だってぇ〜じゃありません」
(まだまだ構ってもらいたい…)
「それともまだ足りないんですか?」
と、どこか艶のある声で耳元で囁かれた。
「!!べ、別にそんなんじゃ…」
本心を見透かされたようでセシーリアは真っ赤になって慌てる。
ジャックには背を向けているので顔までは見られてないが、とっさに手で隠してしまった。
「じゃあ、早く起きてください」
ジャックは小さく笑うと、再びいつもの調子に戻った。
「…起きたら何かしてくれる?」
セシーリアは顔を隠していた手をどけると、小さくつぶやいた。
「何か?とは?」
「何か…?」
「…」
「…」
暫く沈黙が続いた。
(ああ、もうなんて抽象的なことを言ってしまったんだろう。これじゃあ困らせるだけじゃない!)
「わかりました」
「え?」
ジャックはセシーリアを横抱きすると、こちらが目を逸らしてしまいたくなるぐらいに、真っ直ぐに見つめてきた。
「な、な、な、なにを…」
セシーリアはさっきよりも真っ赤になってジャックから目を逸らす。
するとジャックは余裕そうな笑みを浮かべて、セシーリアにそっとキスをした。
「っ…」
セシーリアは自分から素早く唇を離すと、もう借りてきた猫のようになるしかなかった。
「フフ、おはようございます」
「お、おはよう…ございます…」
「これで満足ですか?」
ジャックはセシーリアを丁寧に下ろす。
「え?ええ、そ、そうね…」
セシーリアは動揺を隠せないで、視線をキョロキョロさせる。
そんな姿が愛おしくて愛おしくて、ジャックはたまらなかった。
こんな日々が毎日続きますように。
そう願うようにジャックはまたキスをした。