HONEY BUNNY P!NK♡⦅前編⦆

七生いわく、松川のおっちゃん――俺がお世話になっている居酒屋の店主は、話上手で聞き上手。飯は旨いし酒にも拘っていて、落ち着いた大人のリピーターを多く獲得している。ただ、立地に恵まれず良く言えば隠れ家。悪く言えば寂れた店とも取れた。でも俺はその静かな雰囲気の松ノ屋がこの上なく好きで、大将のことも手放しで尊敬している。大将は助けてくれたから。やさぐれていた俺を。


『おにいちゃん、うちの店になにか用かい?』
『……あ、すみません』
『ふむ。なんだか腹が減ってる顔だなあ。ちょっとこっちに入っておいで。実は今日から新しい突き出しにしようかと考えていたんだけど、どうにも不安でねえ。良かったら味見をしとくれよ』


賄いのでる、割りのいいバイトをクビになったばかりだった。〝食〟は貧乏学生の生命線だ。それを理不尽に奪われた。原因はスタッフ同士の俺の取り合い。しょーもなさ過ぎて反吐がでる。そもそも誰とも付き合ってないし好きでもねえよ。ふざけんな。