「私は……大丈夫です」


 私なんかが参加してしまったら空気が悪くなってしまうかもしれません。


「羽花」


 両頬が大きな手のひらに包まれ、グイッと視界が変わった。目と鼻の先に真剣な表情の雷斗くんとバチリと視線がぶつかる。


 ドキドキしすぎて体中の血液が沸騰してしまったかかのように身体が熱く、包まれた頬からゆっくりと溶けていってしまいそうだ。


「羽花、一回でいい。一回でいいから勇気を出して自分の意見をクラスの人達に伝えてみたらどうだ?」


 勇気を出して……私が?


「私は空気のように、いや、空気だと皆さんの酸素を汚してしまっている気がっ、えっと壁のようにただその場に入れるだけで満足です」


「本当に?」


 雷斗くんは私の気持ちを確かめるように視線を一ミリたりともズラしてこない。


「は、はい……」


 つい、この真っ直ぐな瞳に負けて素直な気持ちを言ってしまいそうになった。言っても皆さんを困らせるだけなのに。


「ったく、羽花は頑固だな。でも、もし勇気が出せて自分の思ってる事が言えて意見を聞いてもらえたら俺も一緒によろこぶし、もしダメだったら俺が励ましてやるから。まぁ俺じゃ頼りないかもしれないけどよ、たった一度の高校二年の文化祭、楽しまなきゃ損だぞ。分かったな?」


 最後にギュウッと力を込めてくれているかのように私の頬を潰してきた。