「間に合わなかったって俺から逃げようとしてたのか?」


「う……だって、本当に目立ちたくないんですよ。怖いんです」


「またイジメられるかもしれないって?」


 真剣な漆黒の瞳が眼鏡の奥から私を真っ直ぐに捉えている。


「そうです。弱いやつだって笑ってくれても構いません」


 ふわりと優しい暖かさが私の身体を包み込んだ。


「そうか、そんなに辛い過去だったんだな。ごめん、軽く考えてた所があったかもしれない。ごめんな」


 謝られるとなぜか余計に悲しくなったきて溢れ出す涙が頬を濡らす。また雷斗くんの前で大泣きしている自分。確かに雷斗くんが付き合ってるなんて爆弾発言をしなければこんなふうに昔を思い出して泣くことも無かったかもしれない。


 だけど雷斗くんの事を嫌いになるとか、そういう事じゃない。


 じゃあなに? って聞かれるとそれは分からないけれど……