みんなの好奇の目線を感じながらも昇降口に突き進む。不思議なことにやたらみられてヒソヒソ話はされるが質問攻めにあったりはしない。それが唯一の救いだ。


(私には聞きづらいのかもしれないな、もしかしたら知らないところで雷斗くんが質問攻めにあってるのかもしれないですよね)


「そーいや今日から文化祭の話し合い始まるだろ?」


「多分そうだと思います。昨日先生が言ってたような気がします」


「じゃあ話し合い頑張れよ。昼休みにまた迎えに行くから」


 雷斗くんは満足そうに私の頭をポンポンと撫でてから教室へ向かった。


(一体何を頑張ればいいのでしょうか?)


 雷斗くんが何に対して頑張れと私に言ったのかまったく検討がつかなかった。


 自分の教室に向かう途中で「ブスじゃん」とすれ違った女子に言われてしまった。


(つ、ついに言われてしまいました……実際そうなので否定はできませんね……)


 でもやっぱり小学生ぶりに言われた悪口に身体が反応してしまいバクバクと心臓が変な動きをし始めた。怖い。そう思った。


(ど、どうしよう、震えが止まらない)


 両手を握りしめて震えを止めようと試みるがなかなか止まらず小刻みに震え続ける。またあの時みたいにイジメられたらどうしよう、翔ちゃんの時みたいに雷斗くんまで巻き込んでしまうかもしれない。そう思うと怖くて堪らなかった。ずっと一人で誰にも迷惑をかけないようにひっそり生きてきたのに。


 制服のポケットでスマホが鳴っている。翔ちゃんと表示された電話、通話ボタンを押すと聞き慣れた翔ちゃんの声に少しだけ震えが緩んだ。


「羽花、お前顔色悪いからすぐに保健室に来い。今は俺しかいないから大丈夫だよ」
「……う、うん」


 保健室に入るとものすごく怒った顔の翔ちゃんが仁王立ちして待っていた。