「ん、おはよ」


 グッと顔を下ろし私の肩に顔を乗せた。


(はわわ、な、なんなんでしょうか!?)


 雷斗くんはスンスンと匂いを嗅いでいるようで、息遣いが耳元聞こえてくる。


「ら、雷斗くんどうしたんですか。ち、近すぎです……」


「ん〜? いい匂いだなって匂いに浸ってる」


「ああ、お味噌汁ですかね? 私もさっき自分で作りながらいい匂いだなぁって思ってました」


「……まぁ味噌汁もいい匂いだけど、俺的には羽花の匂いの方がいい匂いで好きだけどな。凄い落ち着く」


 ……わ、私?


(ひぃぃいいいいいいいっ)


「あ、あ、あ、あの……私の匂いはなるべく嗅がないでいただけると……そりゃもちろん雷斗くん家の高級なシャンプーなどを使わせていただいてるのでいい匂いなのですが、それとはまた別で私から放つ体臭はきっと臭いと思うので……離れてください……」


 雷斗くんは、一向に離れない。それどころか左手を前に回して抱き締めてくる。振り解けばいいのに振り解けない。なんだか胸の奥の何かがぶわりと湧き上がってきて泣そうになる。


「なんでそう思うの? 俺がいい匂いって言ってんのに」


 こんなに優しい声で自分の存在を認めてくれる人は初めてだ。