呼び出し音が鳴る。デリバリーのピザが届いたようでふと雷斗くんの腕の力が弱まり私の身体は解放された。


「皿出して待ってて、金払ってくるから」


「は、はいっ、準備しておきます」


 普通に、普通にと思っているけど、そう思うと尚更風に出来ない。離れた身体は今も熱い。熱くて、熱くて溶けてしまいそうだ。


(どうしちゃったんだろう、私)


 ダイニングテーブルの上にお皿を並べコップに麦茶を注いで雷斗くんを待つ。


 スーッと鼻に香ばしい匂いが入ってきた。その瞬間ぐぅぅとお腹が盛大に鳴る。


(は、恥ずかしいっ、聞こえてないかな!?)


「ははっ、すげぇ音。そりゃバイト終わりだもん腹減るよな。早く食べようぜ」


 聞こえてたーーー。恥ずかしすぎて穴があったら入りたい。


 ダイニングテーブルに向かい合わせに座り、広げられたピザ。久しぶりにお目にかかるピザは輝いて見える。焼き目のあるチーズがたっぷりととろけていて、ますますお腹が鳴りそうだ。


「うわぁぁ、凄く美味しそうです。こんな高級なピザ食べてもいいんですか?」


 なんだか身の丈に合わないのに食べてもいいのかな……


「当たり前だろ、早く食べねぇと俺が全部食べちまうぞ?」


「あーーー、食べます食べます! 食べさせてくださいっ」


 既にカットされているピザは左手でも食べやすいみたいで雷斗くんは食べさせてとは言ってこない。そのおかげで美味しいピザが存分に味わって食べられた。