国宝級美男子のお世話は甘い危険がいっぱい〜私の心臓いくつあっても足りませんっ〜

　キラキラしているお父さんと雷斗くんを眺めていると「はぁ」と困ったような深い溜息が聞こえた。


　私の前を歩く綺麗な長い黒髪の女性の胸元には盛大にワインのような紫のシミ。


「あ、あの、どうかなさったんですか？」
　溜息をつく品の良い女性が気になって後先考えずに話かけてしまった。


「え……あぁ、少し服を汚してしまいまして、どうしようか考えていまた。申し訳ございません。気をつかわせてしまったみたいですね」


　申し訳無さそうに謝る女性に、なにかしてあげられないか考えた。


「あ、あのっ、よかったらコレ使ってください。ワインのシミを隠すのに使えると思うんです！」


　自分の肩に掛けていたグレイのストールを外し女性に差し出した。


「今日おろしたばかりの新品です！　汚くはないはずですから、使ってください。あ、でも私が使っていたので嫌ですよねっ。すいません、変な事を言ってしまって」


　私が使っていたものなんて触りたいと思はずがない。こんな時に限って小学生の頃の悪夢が蘇ってくる。汚い、羽花菌が伝染ると言われた日々のことが。


「せっかくこの日のために用意したストールをこんな見知らぬ人に貸して頂けるんですか？」


「え……も、もちろんです！　私はストールがなくても困りませんし、いらぬおせっかいでしたらすいません。でもきっとストールもこんなに素敵な人に使ってもらえたら喜んでくれると思います」


　女性は目を細めてクスクスと上品に笑顔を見せた。