「これより一ノ瀬カンパニー創立五十周年記念パーティーを開催致します」


　大きなステージ横にいる司会進行の方のよく通った声が会場内に響く。ついに始まったんだ……雷斗くんはこの後ステージ上で挨拶するお父さんの横に立たなくてはいけなくて、私の隣からいなくってしまう。正直不安だ。この大きなたくさんの人がいる中で一人でいるのは少し怖い。


「じゃあ俺行ってくるけど、すこしの間ここで待ってて。なるべく早く戻ってくるから」


「はい、雷斗くん頑張ってくださいね」


「ん、ありがとうな」


　私の頭を優しく撫でて雷斗くんはごく自然にきらびやかな世界に溶け込んで行った。


「端の壁の方で大人しく見てよう……」


　会場の人たちが和気あいあいと話しているなか、私は一人ポツンと壁と一体化していた。


（なんだか少し前の自分に戻ったみたいです……かといって一人でご飯を食べるのもちょっと……）


　なんだか弱気になりそだった。深く深呼吸してシャンっと背筋を伸ばし直す。気合を入れ直してしっかりと前を向いた。もう昔の自分には戻りたくない。