五日目、ついに特訓最終日。明日は運命のパーティーだ。


「雷斗くん、最終日の今日は何を特訓しますか?」


「特訓は今日はしない」


「へ……?」


 今なんて言いました? 特訓はしない?


「な、なんでですか!? 本番は明日ですよ!?」


「もう十分やったから大丈夫だろ、今日は明日にそなえてしっかりと休んで寝たほうがいい。羽花も毎日の学校、バイトに加えて特訓して、疲れてるだろ」


「っそ、っそれは……」


 そんなことない、と言えば嘘になる。


「な、だから今日はゆっくり飯食って、風呂に入って寝る。これが今日の特訓」


「いいいのでしょうか」


「いいに決まってんだろ。さあ飯くおうぜ。腹減った〜」


「じゃあ準備しますね! お肉焼きますっ」


 久しぶりにゆっくりとご飯を食べて湯船に浸かった。


 なんだか妙に雷斗くんが優しくて、少し怖くなった。最後の夜、なんて考えていたらどうしよう。悪い想像ばかりが膨らんで私は湯船の中で膝を抱え込むようにして丸く蹲った。