白いフローリングの広い廊下。まっすぐ進むとリビングダイニング。部屋全体が白とグレイで統一されていてまるでモデルルームに見学しに来たみたいだ。


「ひ、広すぎます。そして綺麗っ」


「そうか? 普通だろ」


 これを普通と言ってしまうところが確実に価値観の違いを、今まで生きてきた世界が違うと思い知らされる。きっとこれからも彼とは生きる世界が違うんだろう、今だけ、怪我が治るまで、だ。


「羽花」


 響く低音ボイスで名前を呼ばれドキンと心臓が跳ね上がった。


「は、はいぃ」


「こっちの部屋羽花が使っていいから」


 自分の部屋よりもはるかに広い。こんなりっぱな部屋私には勿体無いですっ。


「私もっと狭い部屋でいいです! なんならクローゼットの中でもいいです!」


「クローゼットの中ってお前、ははっ、笑わすなよな〜」


「ええ!? 私本気ですよ?」


「いいから、これはご主人さま命令」


 ……ご、ご主人さま? もしかして、もしかしなくても雷斗くんの事ですかね?


「羽花、返事は?」


 NOとは言わせない力強い声。


「うぅ、分かりました。ご主人さま」


 雷斗くんはご満悦のようで小さい子供のような可愛い笑顔で笑った。