玄関を出るお父さんの背中を見送ると身体の力がいっきにプシューと抜け廊下に座り込んだ。


「羽花!? 大丈夫か? 本当にゴメンな。面倒な事に巻き込んで」


 力の抜けた私の身体を覆いかぶさるように包み込んでくれた雷斗くんの顔も疲れ切っている。


「だ、大丈夫です。ちょっと気が抜けただけで、私全く面倒なことだなんて思っていません。私と雷斗くんの未来の為のことなんですよね? むしろ嬉しかったです。そう言ってもらえたことが。私って雷斗くんのこれからの先にも存在しているんだって嬉しくて。でも私まだまだ雷斗くんの事知らないことでいっぱいです。雷斗くんって社長さんだったんですね」


「社長ではないけどな。黙ってるつもりは無かったんだけど、俺の親父が二代目の不動産会社の社長なんだ。建物の建築からマンションの経営まで幅広くやってて、俺はその三代目にいずれかは就任するってわけ。だから高校の間は成績トップを守るからって約束のかわりに家からのしがらみから抜け出したかったんだ」


「そうだったんですね、雷斗くんの事が知れて嬉しいです。そういうことならお父さんの言うことも分かります。私は普通の、いえ、普通よりももっと格下のただの女子高校生なのでお父さんが認めてくれないはずです。でも……雷斗くんの離れたくないと思ってしまうのは図々しいでしょうか……私、雷斗くんの隣にいてもはじのないような女になれるよう努力しますから、側にいても、好きでいてもいいですか……?」