いつの間にか私の背中は玄関ドアにピッタリとつき雷斗くんの左腕と右足に身体を捉えられている。抜け出せない。


 上からジッと見下され優等生モードの雷斗くんの艷やかな前髪がサラリと私の顔を掠った。金縛りにあったかのように身体は硬直して動かない。


「……羽花は俺の事どう思ってる?」


 やっと聞けた雷斗くんの低くて響く声が身体の中を一気に駆け巡り、ビリっと身体がっ痺れる。


(ど、どういった事しょう。いじわるだけど優しい人とかですかね? まさか!? 雷斗くんも誰かになにか変なことでも言われてしまったのでしょうか!? そしたら完全に私のせいですよね……)
 

 雷斗くんの真っ直ぐな瞳は消して私から逸れない。


「……雷斗くんは優しい人です」
 
「他には?」


「ほ、他には、い、いじわるな人です。今だって私だけがとてもドキドキしてしまって、苦しいです」


「羽花、俺にドキドキしてんの?」


「……はい」


 その瞬間玄関ドアにピッタリと着いていた背が剥がされるように抱き寄せられ私の身体はすっぽりと雷斗くんの腕の中に収まってしまった。


 思いもよらない雷斗くんの行動に胸は高鳴り続け、キュウキュウと締め付けられ痛いくらい。


「ら、雷斗くん?」
 

 耳元にはぁーと深い溜息が当たる。熱い吐息で耳から溶けてしまいそう。