多分、レイナさんはもう大丈夫


でも問題はあたし

こんな騒動の後に、まだ不機嫌そうな般若とどう向き合ったらいいの?
しかも、この状況はレイナさん絡みだし・・・
あたし、レイナさんのこととか全然知らないのに・・・

そういえば、レイナさんって名前、森村先生絡みでよく耳にするけど、もしかして目の前にいる彼女がそのレイナさん・・なのかな?
もしそうであったも、それ以外にレイナさんのこと、あたしは知らない



「まお、お前はとりあえず長谷川くんのところで評価やってこい。」

『・・は、はい。』

「で、終わったら、俺は感覚検査室のほうで訓練しているから、ノックして入って来いな。」

「わ、わかりました。」


動揺しているあたしを察してなのか、岡崎先生は的確な指示をしてくれた。
しかも見学許可までありの指示までも!


「お前、耳、噛まれてないよな?」

『・・・ないです。』

「良かった・・・嫁入り前だしな。」


そう言った岡崎先生の声が安堵しているように聞こえるのは気のせい・・なのかな?



嫁入り前ってこだわるなんて
絵里奈の言った通り、やっぱり、硬派岡崎なの?


『やっぱり難攻不落・・なのかも・・でもガード緩いって聞いたし・・』

「何が難攻不落なんだよっ?ガード緩いってのもなんなんだ?」

『しまった・・・・』


心の中で思っていたことをつい呟いてしまったことを
繊細らしい岡崎先生が聞き逃すはずはなく。


「なにがしまった、だよ?・・・まあ、例え噛み千切られても、ちゃんともらってやるから安心しろ。」

『えっ?今、なんて?』

「あっ、い、急げ!長谷川くん待ってるぞ!彼、まおに、レポートちゃんと完成させてやるって意気込んでいたからな。」

『あっ、そうだった!行かなきゃ。』

「行ってこい!頑張れよ。」

『ハイ!』


さっきまでN極とS極の磁石が足裏と床の間でひっついたように動けなかったあたし。
彼の“行ってこい!頑張れよ”の一言で、その磁石が足裏からするっと離れたみたいに勢いよく走り始めた。




実習13日目
残り5日


今日、あたしが知ったもの


①岡崎先生がレイナさんという患者さんと行う、別世界なオーラを纏う空気に包まれながら天才的手技で行うハンドセラピイ
・・・いつもフットワークがいいと言われるあたしなのに足裏に磁石がついてしまったかのように動けなくなったもの


②距離とリトマス試験紙
・・・繊細かつ難攻不落で硬派な岡崎先生がひたすら気にするもの?


③岡崎先生からの“行ってこい!頑張れ!”の一言
・・・頑張らなきゃいけないあたしの背中を強く押すもの!


毎日の実習の記録を記すデイリーノートに、岡崎先生関連のワードが並ぶことが増えた
実習残りあと5日
残り少ないけれど、デイリーノート上でもっともっと天才と称される岡崎先生関連のワードが増やしたい

そんなことを素直に想った