「真緒、ちょっと今回の件は難しいよ。恋の上級者レベル。」

『ど、どういうこと?』

「だって、真緒が大胆にも、裾を引っ張って帰らないでアピールしているのに男のほうが理性を働かせて何もしないなんて・・・昔から、据え膳食わぬは男の恥って言うじゃない。食われてしまうほうが簡単なの!」

『据え膳食わぬはって・・・?!』

「男の恥よ~。岡崎先生、見た感じ、据え膳、大好物そうなのに・・」


恋愛興味なしだったあたしにはちょっと過激な諺
しかも、般若が本人の知らないところで据え膳好きイメージを持たれているし


「まさかの硬派岡崎?!・・・難攻不落物件なんだ~!真緒、大変だね、がんばれ!」

『難攻不落物件って・・・頑張れって・・・あたしが般若、落とすの?』

「えっ?まさかの真緒の大胆行動、自覚なし?! だって、今時、そんな硬派、貴重だよ?」

『だって、実習のバイザーだよ?しかも塩対応の!落とすとか・・ないでしょ、・・・・ないない!それに、俺のことを殺す気かとまで言われたんだよ?』

「そんなことまで岡崎先生に言わせたの? 真緒~、やっぱりさ~、恋は落ちるもんじゃない!落とすものよ!令和の時代はそうなの!さ、朝ごはん食べて作戦会議よ!」


恋の話が大好きなのに、今までは恋愛興味なしのあたしに遠慮して、そういう話はあまりしようとしなかった絵里奈。
だから、彼女の作戦会議はとんでもないことになると予感したあたしは

「真緒~。レポートなんて後でいいじゃん!」

『ダメ!あたし、ここで留年決定したくない!!!絵里奈も呼吸器症例レポート、まだ書き上げてないんでしょ?』

「・・・現実に引き戻さないでよ・・・」

『はい、じゃ、やるやる。一緒に実習合格して、一緒に4年生に進級するよ!』

「はぁ~い、やりま~す・・・」


学生の本分を彼女に突き付けることで
難攻不落で上級者レベルの恋の作戦会議から逃げた。






実習がお休みな日曜日に耳にしたもの

”恋は落ちるものじゃない、恋は落とすものだ”

絵里奈のその名言がまだ理解できていないあたしは
多分、恋のレポートを書いたら、また大きな赤いバツ印をくらうだろう
あたしの恋の実習は不合格?!

あたしの臨床評価実習
すでに期間2/3が終了
残り1/3・・・

恋の実習は不合格でも、本業の実習は絶対合格したい!
リハビリ学生はこうでなきゃでしょっ
ね、は~んにゃ(般若)!