「岡崎さん、ちょっとその言葉はどうかと・・・やっぱり僕が送ります。」
でも、気遣いの人下柳先生が黙ってはいなかった。
下柳先生にとって先輩である般若が相手でもちゃんと言ってくれるなんて
それだけでも救われる
ここ最近、般若の塩対応に慣れてきたあたしがいたけど
自分では努力とかしてもどうにもならない容姿のことを言われるのはちょっとダメだ
やっぱりこのまま下柳先生のご厚意に甘えてしまおう
そう思って席を立った。
それなのに、
「真緒だから・・・だから言うんだ・・・」
背後から聞こえてきた般若の情けない声。
初めて聞く
決して病院では聞くことのないようなその声
般若のこんな声につい後ろ髪をひかれてしまう
それはその声を一緒に耳にした下柳先生も気になったようで
「岡崎さん・・・神林さんがそれで良ければ、彼女を寮まで送って行ってあげて下さい。」
「・・・ああ。」
「神林さん、それでいい?」
あたしを般若・・いや岡崎先生に委ねていいかを聞いてくれた。
この状況で、嫌ですとはとても言えない
しかも、“真緒だから・・だから言うんだ”という意味を知りたい
美人だったらスルーで
あたしだからスルーできない
自分が美人ではないって自覚はしているけれど
下柳先生が寮まであたしを送ることを反対されなきゃいけないという
そこに何があるのか・・を
『・・・はい。それでいいです。』
だからあたしはこの時、下柳先生よりも岡崎先生を選んだ。



