「誰か伊織の居場所、知らない?」

「さっき、森村先生とメロンパンを食べながら運動療法室のエルゴメーターを漕いでいるところを見ましたけど、さすがにもうすぐリハビリ業務が始まる時間なのでもういないと思いますけど・・・」

「まったくあのふたりは・・・どーりでエルゴメーターの近くにパンかすがいっぱい落ちていたわけだ。」

「パンかすは多分、森村先生が食べこぼしたものだと思います。日詠~、見てろよ~食い潰してやるって吠えながらエルゴメーター漕いでガツガツとメロンパン食べていましたから。」


岡崎先生を捜しているらしい松浦先生。
彼は岡崎先生の足跡を掴んでいるらしい女性理学療法士の先生と話をしながら、スタッフルーム隅にある掃除ロッカーからほうきと塵取りを取り出し、はあっと大きな溜息をつく。

その会話が聞こえてきたあたしはつい振り返りそうになったけれど、
会話の内容が内緒にしたそうな話であったため、あたしは電子カルテを熟読しているふりをする。


「森村先生と一緒に居たのなら、そのまま整形外科病棟へ行ったのかもな。
でも、もう午後の業務始まるし、伊織の件は後にするか。」

「そうですね。岡崎さんを見かけたら、松浦さんが捜していたと伝えておきます。」

「ああ、頼む。」


聞いてないふりをして、岡崎先生の居場所を掴んだかもしれない
もしかして、今、まさに整形外科病棟で長谷川さんのリハビリをしているのかもしれない

どんなふうにリハビリをしているのだろう?
どんなふうに長谷川さんとコミュニケーションをとっているのだろう?
リハビリ拒否されたりしていないのだろうか?

だったら、今すぐにでも整形外科病棟にいって様子を目撃しなきゃ!


そう思ったあたしは、

『松浦先生、すみません。ちょっと整形外科病棟へ岡崎先生を捜しに行ってきます。』

ほうきと塵取りを持ってリハビリスタッフルームから移動しようとしていた松浦先生に対し、あたしはついさっき自分が盗み聞きしていたことを暴露するような声かけをしてスタッフルームから飛び出した。