『これとこれ、どうしよう・・・受け取っちゃったし。そのままじゃ、長谷川さんのところに行けないし・・・あっ・・・』


両手に持ったものを見ながらそう呟いたあたしは気がついた。
メロンパンと院内PHS番号の書かれた黄色のメモ。
それらは私が自分の評価が進んでいないことに焦り、長谷川さんの心身状況に配慮することのないまま彼のところに焦って再び向かわないようにする森村先生の策略が浸み込んでいるかもしれない・・と。


『チーム長谷川さん・・・に入れてもらえたのかな?』


ついさっきまで長谷川さんの視界にいまだに入れない自分に困惑していたはず
それなのに、たった10分足らずで困惑の暗闇の中にひとすじの光が差し込んだ
これもチーム長谷川さんのメンバーである森村先生のおかげ
口の柔らかいイケメンには騙されるなという忠告は謎だけど・・・


『ま、いっか。よし、まずはこれをリハビリスタッフルームのロッカーに置きに行ってから、それからどうするか考えよう!さすがにパンもメモも見つかったらヤバイし。』


あたしはメロンパンと黄色の大切なメモを手にしたまま、ロッカーがあるリハビリスタッフルームに向かった。
さっきよりも明らかに軽やかな足取りで。


それにも関わらずリハビリスタッフルーム近くで背後から黄色いメモを抜き取られた反動で後ろに転びそうになったあたし。

『きゃっ!!!!』

「ドンくさいな~。まお、なんだよこれ。」


一番見つかってはいけない人に倒れそうになった背中を支えられた。
その瞬間、ふわりと鼻をかすめるグリーンウッド系の爽やかな香り。
そして、背中がじんじんするような彼の硬い胸板の感触。
えぐられるような制御できない胸の動き

森村先生のおかげでついさっき元気になりかけたあたしだったけれど、突然降りかかってきたそれらの感覚があたしの思考を勝手に静止させた。