『あの、コレ・・・』

「それ食べて、元気だしな。」

『・・・ありがとうございます・・・でも、コレ・・・』


ほぼ強制的に受け取らされたメロンパンをまじまじと見じた。
森村先生の代名詞と言っていい焼きそばパンではない。


『・・・焼きそばパンじゃない・・・』

つい口にしてしまった疑問。


それに対しても森村先生は

「ああ、それね~、俺の恋のライバルで、日詠っていう男の医者がいるんだけどさ~、そいつがいつも買っているのがそのメロンパンで、棚にラスト1個だったから買い占めてやったんだ!」

『・・・・・買い占めたメロンパン・・・』

「日詠さん、ただでさえモテモテなくせに、俺のレイナにまで手を出しやがって・・・日詠さんの大好物のメロンパン買い占めなんて、まだかわいい嫌がらせってとこだぜ。」

とかなり丁寧な説明を添えて、あたしのうっかり口にした疑問に答えて下さった。


「でも、そのメロンパン自身には罪はない。だからマオちゃん、それ食って、元気出せ。」

『でも・・・』

「マオちゃん、俺の代わりにそれを日詠さんだと思って食い潰してくれ!そうしたら俺も元気でるから!」


拳をぐっと握りながらニヤリと笑った森村先生。

あたしがその日詠先生という人のことを食い潰す必要性なんて1%もない
森村先生の恋のライバルというその人も変態なんだろうか・・・

いつものあたしならそんなことを考えてしまうんだけど
さすがに実習が上手くいっているとは思えない現状だから
美味しそうなその人気メロンパンをただ受け取ることぐらいしかできない


「マオちゃん、俺たちはチーム長谷川!困ったこと、悩ましいことがあったら、いつでも共有する!そのための時間はいくらでも取るから!あと、口の柔らかいイケメンには騙されるなよ!」

それでもそんなあたしを応援してくれているらしい森村先生はそう言ってあたしに黄色のメモを手渡した後、ドクターチェアから勢いよく立ち上がり、“またな~♪”と軽く手を挙げながら処置室から出て行った。

右手に持っていたメロンパンとは反対の左手に手渡されたのは、森村院内PHS:2004と書かれた黄色のメモだった。