「ここ、血腫があるね。右脳の運動野にある。ちょっと脳萎縮もあるかな・・・」

パソコン画面を見つめながらボールペンで指し示して解説してくれる下柳先生。

「ここ・・小脳にも小さい梗塞巣があるね。これぐらいの大きなならサイレントかな。脳室拡大はなさそうだね。前頭葉萎縮もちょっと怪しいな」

『・・・・・』


4学年上の下柳先生がMRI画像を見ながらすらすらと解説してくれる
たった4学年上

お医者さんじゃないのに
しかも、あたしが目指している作業療法士なのに
こんなにも医学の専門的な知識があるなんて

たった4年されど4年
どれだけ勉強しなければいけないんだろう・・・


「神林さん?」

『・・・・えっ、はい。』


しまった
今のあたしのワンテンポ遅れた返事
下柳先生の解説を聞いていなかったように思われちゃったかな?


「こういう画像所見を読むのも、丁寧に経験積んでくればできるようになってくるから大丈夫だよ。」

『・・・はい。』


またワンテンポ遅れてしまった返事
でも、今度の返事が遅れたのは
自分の不安を気がついてくれた下柳先生のその一言が嬉しかったから


「じゃ、午後から患者さんの評価実習を始めようね。」

『ハイ!』


あたしはこの実習で初めてと言っていいぐらいの笑顔で挨拶できたんだ