Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!



レストランはホテルの25階にある、日頃のあたしでは絶対に入れないような、大人が集いそうなレストラン。

レストランの入り口から少し前に進むと、薄暗い照明の中にグランドピアノが設置されていて、黒のドレス姿の女性が軽やかにそのピアノを弾いている。
レストラン内に響いていたピアノの音色は、ビートルズの懐かしい曲。
少し薄暗い店内に優しく響くその音色はあまりにも素敵すぎて、周囲にいる大人達みたいに、その音色を聞き流しながら食事を楽しむなんてできそうもない


「周りは気にせず、楽しめばいいから。」

完全に気後れしてしまって、何を注文したらいいかわからないあたしに、微笑みながらそう言った後、彼はここでもスマートにコース料理と飲み物を注文してくれた。

その後、料理が運ばれてきて食前酒で乾杯してから食べ始める。
コース料理なんて、高校生の頃に参加した従妹の結婚式の披露宴で食べて以来で、マナーすら怪しい。

それを見透かしていたのか、彼は指先でそっとジェスチャーしてくれながら教えてくれる。
それは関係ないだろうというふざけたジェスチャーを交えながらだけど。


『も~う、それ違う!!!』

「真緒のマネ。」

『嘘っ、あたし、そんなことしてます?』

「考えている時、眉間に皺寄せて、鼻つまんでる。何か匂い嗅いだのかって思うような顔してるし。」

『それ、無意識ですよ・・・』

「ぶちゃいく過ぎて笑える。また、鼻かじってもいい?」

『ダメです。本当にぶちゃいくになっちゃう。』


あたしの緊張をほぐすような、彼のジェスチャー。
それがきっかけになり、おまけに一気に飲み干した食前酒の酔いが回ってきたあたしは調子に乗って、岡崎先生にいろいろ聞きまくってみた。


岡崎先生という人は

・・・大学が名古屋で、そのまま名古屋に居ついてしまっていること
・・・国宝の城巡りにハマっているのに、地元である松本城はまだ行ったことがないこと
・・・実は両利きであること
・・・ペットを飼うなら柴犬オンリー
・・・お祭りの出店では、必ずイカ焼きを買うこと
・・・靴は左足から履くこと
・・・遊園地ではジェットコースターは乗らない派(多分乗れない派)
・・・高校時代は剣道部に入部しようと思ったら、体格のせいでラグビー部に引き摺られて入部させられたこと

聞けば聞く程、不思議で面白い人だと思う

あたしが聞く質問に、時には恥ずかしそうに、そして時には “なんだよ、その質問は!” と面倒くさそうだけど笑って答える彼。