『高山祭の頃の桜は本当にきれいなんだけどな。今年は絵里奈と一緒に見たけど、岡崎先生とも見たかったな・・・。』
約1か月前、岡崎先生と一緒に通りかかった宮川にかかっている中橋。
そこの桜の見頃は過ぎてしまい葉桜となっている。
『でも、桜は今年限りじゃないから・・・』
これから、大好きな岡崎先生が暮らしている名古屋へ向かうこともあって、前向きなあたしは駅前で高山土産をたくさん買い込んで特急電車に乗り込んだ。
『すごい混んでる!!!! 満席・・・そっか~、そういえばゴールデンウイークだった。』
4月に作業療法士1年生として病院に従事し始めてから、忙しすぎてゴールデンウイーク前に“岡崎先生に会える~!!!”とウキウキする余裕がなかった。
あっという間に約束の日が来て、電車に乗っている。
山間部の飛騨川沿いに走っていた特急がいつの間にか、民家が並ぶ市街地を走っている。徐々に民家よりもビルが多く見えるようになり、ついに名古屋駅に到着。
ホームから改札口に向かう際に、あまりにも人が多くて、本当に岡崎先生に会うことができるか不安になる。
『中央改札・・・広い・・岡崎先生、どこ?』
高山駅と比べると明らかに自動改札機が多い改札口。
改札口の向こう側を見ても、通行人の数がハンパなくて、岡崎先生の姿を確認することができない。
とりあえず改札を出た。
岡崎先生の姿ナシ。
時刻が約束の午後12時まであと3分。
そういえば、岡崎先生と約束して会うのは初めて。
『もしかして、この人混みだし、岡崎先生もあたしを捜しているかもしれない。』
こんな心配をするなんて、過去のあたしが知ったら驚くだろうと思ったら自然に笑ってしまった。
「ひとりで笑うとか、怪しい人に見られるぞ。」
『あっ!!!!』



