「真緒~待って!!!!」
『お母さん、どうしたの?』
「伊織クンに、純夏ちゃん特製お弁当を持って行ってあげて!」
『ありがと。わざわざ作ってくれたの?』
「そうよ~。昼はどうせ外食するんでしょ?だから、これは夜の分。真緒の分もあるのよ。」
『ホント?嬉しい。ありがと!岡崎先生もきっと喜ぶと思うよ。』
「そうね・・きっと、そうね・・・間違いないわ。うふふ~。」
お母さんの笑みがなんだが含み笑いに見えたのが気になった。
けれども、岡崎先生に会うということを冷やかした笑い・・・だと思う。
でも、コーヒーショップのロゴが入った紙袋にお弁当らしきうものがふたつ入っているけど、お母さんがいつも作ってくれるお弁当よりも重量感がないような気がする。
もしかしてサンドイッチかな?
なんだかひんやりする保冷剤らしきものも入っているようだし。
『じゃあ、行ってきます!』
「行ってらっしゃい、真緒~。お弁当飲んで頑張るのよ~って伊織クンにもちゃんとそう伝えてね。絶対よ!」
『ん?飲んで頑張る?』
「あっ!!!ち、違うわよ~、あっ、そうそう、遅れるわよ、電車。」
『あっ、それは良くない。行ってきます!』
私は純夏ちゃんお手製お弁当がふたつ入った紙袋とお泊りセットが詰まった鞄を手に提げて、慌てて玄関のドアを開けて、高山駅へ向かった。



