そして迎えた10日後。
『お父さん、お母さん、名古屋へ行ってきます。』
「は?あいつのところ?」
「あいつじゃなくて、伊織クンのところでしょ?」
『そうです。』
朝食を摂りながら、あたしは今日の名古屋行きをさらっと伝えた。
嘘をつくのは良くないから、さらっと報告。
「門限は午後5時だぞ!午後!!!」
『お父さん、今日は遊びじゃないんです。』
「遊びじゃないならなんだよ。」
『出張です。あっ、勉強会です。ほらっ!』
岡崎先生が作成した例の出張依頼書類。
そのコビーをお父さんへ見せた。
ただし、追伸欄の、【追伸:朝までたっぷりと充電させて頂きますので、前日はたっぷり睡眠をとって頂くことをおススメします。】
の中の、“充電” を “勉強” に書き換えて。
「お泊りだと~?! 真緒ちゃん、本当に本当に勉強だろうな?」
『べ、勉強だよ。病院でやるって書いてあるでしょ?』
“充電”という文字をお父さんに見られたら、厳しく追及されそうなので、書き換えましたよ、“勉強”という、誰もが納得するであろう文字に!
どんな勉強するかまでは書き加えませんでしたけどね・・・
「確かに来院って書いてあるな・・・でも、あいつ、絡んでるんでしょ?その勉強会。」
『だ、だって、あたしは岡崎先生担当の実習生だったんだよ?勉強して当然じゃん。』
「そうだよな?、節操なし男度の度数、下げてみせるって言ってたもんな、あいつ・・・男に二言はないよな?」
『そうだよ。そうそう、なので行ってきます。』
「お父さん、信じてるからな~。」
あまり朝食で長居をすると、お父さんに根掘り葉掘り聞かれることで、勉強をするために行くということではなく、岡崎先生に会いに行って充電し合うということがバレてしまうので、さっさと荷物を持って玄関に向かった。



