初めての、今度こそ本当の朝帰り
家までの帰り道は、両親に合わせる顔がないと後ろめたい気持ちを抱えながらも、ふたりで肩を寄せ合って嬉し恥ずかし・・なんだと思ってた
でもなんでだろう・・・?
「真緒、親父さん、まだ家にいるよな?」
普通の朝帰りならば、彼氏は自分の両親に見つからないようにコソコソ帰りそうなのに、
隣を歩いている彼氏になってくれた人は肩で風を切りながら、彼の言葉通り、真正面から堂々と自分の両親に会おうとしている
『多分・・・いると思いますが・・』
「あ~、こういうのも初めてだな。朝帰りに自分の手で彼女の家の玄関をノックするとか。」
そういう彼氏はなかなかいないと思うけど
昨日といい今日といい、あたしが両親の前で後ろめたい想いをしないようにしてくれる彼
でも、あたしの中ではすでに節操なし男のレッテルはないから安心していいよ
だから、今度一緒迎える朝はもっとたくさん甘やかして下さい
あたしも遠慮しないから・・・
『岡崎先生、お父さんは、古い町並みの中にある和菓子屋さんの豆板という豆菓子に目がないんですよ・・・それさえあれば、なんとかなります!』
「真緒、そこのお店、開店何時だ?」
『確か9時だったような・・・』
「おい、それ、今はいらない情報だろ。9時は特急乗っていなきゃいけない時間だ。でもその貴重な情報はまた次の機会に活かす。行くぞ。」
この時のあたし達は、お父さんご機嫌とりアイテムのひとつである豆板を手にすることなく、自宅のチャイムを押した。



