それからも彼はあたしにたくさんのキスを降らせる。
そのひとつひとつがあたしと彼との間にまだ残る心の距離を優しく縮めていく。
その途中で彼が見つけたもの。
それは、
「コレ・・・去年・・・」
あたしが去年の実習中に彼に作ってもらったスワンネックスプリント。
ペンダントのチェーンを取り付けて、肌身離さずにあたしと一緒に居てくれるそれ。
4年生になってからの臨床実習中や国家試験勉強の辛さ、しんどさに直面した時に、それをぎゅっと握ると、岡崎先生が頑張れって言ってくれているみたいに思えて、いつも一緒だった。
こうやってあたしが身に着けていることに驚いた彼は
『あたしを元気にしてくれるお守り・・です。』
と言うあたしの言葉に反応するように、それを手にもって、そっと彼の唇に寄せる。
「お守りか・・・やることなすこと、いちいちかわいい・・よな・・」
あたしのことを真っすぐに褒めないところが、岡崎先生らしいけれど、血が通っていないスプリントすらあたしの身体の一部のように触れる彼に、今度は胸がきゅんとする
こうやって彼もやることなすこと、いちいちあたしの心を揺さぶり続ける
あたしの心臓の鼓動を確認するように長い指をゆっくりと滑らせたり
あたしが深く感じる場所を探したり
その合間には、あたしの様子を窺うようなキスを落としたりすることによっても・・・
肩甲骨内側下のあたりへの彼からのキス
それによって体がピクリと反応して再びよじれるあたしの体を彼は優しく腕の中に引き寄せる
「真緒・・・ゆっくり息、して。」
どうやら、夢中になると息も堪えてしまうらしいあたしを優しく誘導する彼。
「真緒・・・イヤだったらちゃんと言え・・・」
そう言いながら、あたしの、これまで誰にも触れられたことのない場所をそっと触れた指先があまりにも温かくて
『イヤじゃない・・・でも・・もうどうにかなりそう・・です・・・』
「・・・煽るな・・・真緒・・・」
自分自身の身体がどうなっているのかもう自分ではわからないぐらい、もう何も考えられないぐらい、彼の唇と指先そして舌にも翻弄され続けた。



