【Study18:叶わない恋の相手と作りたい大切な記憶】



実習17日目
終了まであと1日


昨日の夕方は大変だった。

実習中は一切関わりがないのに、偶然出逢った病院内コンビニでメロンパンを奢ってもらった日詠先生のハンドセラピィ練習のお手伝い

その途中で現れた岡崎先生に手首を掴まれた際に胸が苦しくなり
その場に居合わせていた日詠先生に診察と心の手当てをしてもらった

その後、心電図検査のためにリハビリ診察室で休ませてもらっていたはずなんだけど・・・

窓のブラインドから明るい光が漏れている
もしかして、もう朝


しかも、今いる部屋には、シャウカステン(レントゲン検査フィルムやMRI画像フィルムを見る際に用いるディスプレイ機器)と診察用椅子、そして、作業療法士がスプリントを作成する時に利用する材料や工具等も置かれている。

ということは、ここは寮じゃない!!!


『はっ?!』


眠気が一気に醒めたというか
手首に温かい感触があって
また昨日みたいに胸が疼く

というか

『岡崎センセ?!』

「はっ?・・・俺・・・寝て・・た?」


目がパッチリと開いたあたしの視界には
あたしが寝ていたベッドの傍らで、ケーシーの上に白衣を着ている上半身をベッドに伏せたまま、あたしの手首に指を当てている岡崎先生の姿あり。


「あっと、いけね。」

どうやらあたしと同様に目が醒めたらしい岡崎先生。
その声と同時にあたしの手首に触れていた彼の指がすっと離れた。

「何時だ、今?・・6時・・か・・・」

座ったまま、う~んと唸りながら背伸びをする彼。
実習生が眠ってしまっていたその隣で寝てしまったという状況だけど、なんら慌てる様子が見られない。
さっきまでの胸の、ずんとした疼きはなんとか収まったけれど、今度は、今のこの状況に緊張してドキドキしているあたしとは対照的だ。


「真緒、どうだ?心電図がついてたからびっくりしたけど。」

『えっ、まあ・・大丈夫だそうです。』

「そうか。でも不整脈かもしれないからって聞いたけど・・・今はどうだ?ちょっと脈見てみるからな。」


そう言いながら、再び彼に触れられた手首。
彼の長い指で探られるのは、あたしの脈打つ橈骨動脈。


ドクンっ!

ドクンっ!