待ち合わせの地下駐車場で
エレベーター脇の壁に寄りかかって待っていてくれた桐悟さんは


Vネックのニットに細身の黒いパンツという
完全にオフモードのスタイルで


・・・格好いい


いつものスーツ姿も素敵だけど
私服姿はレアで瞬きなんてしていられない


「お待たせ」


数歩の距離を小走りに近づくと


「今日も可愛いのな」なんて
甘く微笑むから

頬が一瞬で熱を帯びた


「ほら」


サッと伸びてきた手を
躊躇うことなく掴めば


一度ギュッと包み込まれたあと
その長い指が器用に私の指に絡まった


初めての繋ぎ方に意識は全て持っていかれて


まだ手を繋いだだけなのに
煩い心臓は飛び出しそう


更には・・・
てっきりいつもの厳つい車に星野さんの運転だと思っていたのに
来客用に止まるのは桐悟さんの車で

もうお腹いっぱい


「今日は二人?」


「あぁ」


開けてくれたドアから助手席に乗り込むと
運転席に回った桐悟さんは「これ」と薄手のブランケットを渡してくれた


「ん?」


受け取ったものの、外はまだまだ暑い


「冷房、効きすぎると寒いかと思った」


「ありがとう」


さりげない優しさも全部格好良いから狡い


桐悟さんは私をキュン死にさせるつもりだろうか?

高鳴る胸も火照る頬も
全部全部桐悟さんへの気持ちへ繋がるから

これ以上溢れ出ないように
心の中で「好き」と呟いておいた



「胡桃」


「ん?」


「今日はデートな」


「・・・っ、うん」


不意打ちのそれに、更に頬が熱くなって

隠すように両手で挟んだところで


「出発」


いつになく子供みたいな弾んだ声を出した桐悟さんは
ハンドルを握ったまま視線を合わせるとニッコリ微笑んだ


・・・反則


今日は酷使するだろう心臓に
エールを送って

少し目線が高くなった景色を楽しむことにした