ハンカチで包んだ保冷剤を目蓋に当てて
堪えていた気持ちを解放した


ぐちゃぐちゃの気持ちが沈むほどに
負の感情に溺れる


閉じた目蓋に浮かぶのは
柔らかく微笑む桐悟さんの顔ばかり


あんなに私のことを好きって言ったのに・・・


・・・嘘つき


無限に続く魔のループは
坂道を転がり落ちるように思考を沈ませて

拒絶反応を起こした


電話もメッセージも
桐悟さんだけ鳴らないように通知を切った


お兄ちゃんを出迎えるまでに
気持ちを切り替えなきゃいけない


そう思えば思うほど


桐悟さんの声が蘇って涙が落ちた


信じたいのに


信じられない



こんなにも好きなのに


考えれば考えるほど結末は最悪で



落ちた涙の数だけ


胸が苦しい




諦めないと言ってくれた告白も



初めてだと言ったキスも



『ミナ』さんへの甘い声を思い出すだけで

 
桐悟さんの気持ち全てが嘘に思えてしまう





勝手に立ち聞きして
想像だけで自己完結させた



真実から顔を背ける私の気持は
こんなに儚くて汚い




『聞きたいことは自分で聞け
説明も弁解も出来ない辛さは
胡桃が一番知ってるはずだろ』



沈む気持ちを浮上させようとするみたいに


お兄ちゃんの声が何度も蘇ってくるけれど


それに頷けない私は


桐悟さんの気持ちより
自分の苦しさを優先してしまった