木村病院で面接という名の雑談をした日


帰りに総務課に寄ると“内定”ではなく
採用通知書を頂いた


「簡単で良いのかなぁ」


「良いんじゃね?」


「これは、お兄ちゃんのお陰だよ
ありがとうね」


「んで、大学は何単位くらい残してんの?」


「え?もう卒論だけだよ?」


「マジ?」


「うん。マジ」


夏休みを前に楽ちん宣言をして
残りは実家のパン屋さんの手伝いでもするつもりでいたから

そこは計算通り


「じゃあ、もう少し居てくれるよな?」


「え?なんで?」


「胡桃は冷蔵庫の食材を全てゴミにするつもりなのか?」


「・・・あ」


お兄ちゃんはキッチンを使えないダメな大人だった


「お米も10キロも買ったから
二人でも当分もちそうだろ」


「・・・そっか」


「で、責任取る?」


「・・・うん」


「そうと決まったら就職祝いに
洋服とか買ってやるよ」


「え!本当??」


押し付けられたと思って下がった気分は瞬時に上がる


「あぁ」


「お兄ちゃん大好きーーっ」


「知ってる」


「手持ちの服が少ないから
きっと、めっちゃ買うよ?」


「だから就職祝いだって」


「やっぱお兄ちゃん大好きーーーっ」


「はい!知ってるーーっ」


こうして、残りの食材を使い切る作戦の名の下に


暫くお兄ちゃんと暮らすことになった