コンコン


クゥーン、クゥーン



ノック音と二匹の甘い声に
微睡んでいた意識が戻る


「ん?」


目蓋を持ち上げて瞬きすること数秒


「・・・あ」


どうやらソファに座ったまま寝ていたらしい


二匹の頭を撫でてから
扉を少しだけ開くと眉を下げた陽治さんが立っていた



「どうかしましたか?」


「反応がないから焦ったぁ、さてはクミちゃん寝てたな?」


「・・・っ、?」


どうしてバレたんだろう
座っていたから寝癖もないだろうし・・・


「え」


もしかして涎かもしれないと慌てて口元に手を当てると

ハハハと笑った陽治さんは


「目がトロンとしてる」


答えをくれた


「頭から電話があって、遅くなるから先に食べて寝て欲しいと」


「・・・そう、なんですね」


「もう食堂へ来られるか?」


「じゃあ弁慶と牛若丸にご飯をあげてから向かいますね」


「ん、了解〜」


ウッカリ寝落ちしたにしては
六時を過ぎていて


ウッカリどころではなかった


リビングの隅に置かれた二匹のお皿にご飯を用意して


お水を入れ替えると、携帯電話を持って食堂へと急いだ


途中、寝落ちしていた所為で桐悟さんからのメッセージを見ていないのかと確認したけれど


桐悟さんからのメッセージは届いていなかった




そして・・・



その日



桐悟さんは帰って来なかった