ヴゥ


突然、唸り声を上げる二匹


「どうしたの?」


頭を撫でようとした途端に
コンコンとノック音がした


「すごいね、聞こえたの?」


二匹を「ステイ」制して立ち上がる


万が一を想定して
身体でガードしながら少しだけ扉を開けると陽治さんが立っていた


「クミちゃん」


「どうかしましたか?」


「お昼ご飯を一緒にどうかなって思って」


「ありがとうございます」


携帯電話だけを持って陽治さんと食堂へと向かった


「夜ご飯の支度は手伝いますね?」


「え?、あ、それは・・・」


一瞬満面の笑みで顔を向けた陽治さんは
何かを考えるように口籠った

きっと桐悟さんに気を遣っているはずだから
それを伝えることにした


「桐悟さんに作ってあげるって約束したので」


「本当か?」


「はい」


「じゃあ、宜しく〜」


「はい」


長い廊下を何度か曲がって着いた食堂には
厳ついさん達が並んで待っていてくれた


「クミちゃんは此処な」


明らかに桐悟さんの席だと思われる
お誕生日席に置かれたトレーに気分が下がった



「あの・・・」


「ん?嫌いなものか?違うのにしようか?」


「私も皆さんと並んで座りたいんですけど」


「・・・え」


「お客さんじゃなくて・・・」


「でも、クミちゃんは頭の・・・」


「桐悟さんは家に居ると思ってって言ってくれたので
出来れば特別扱いしないで欲しいです」


「フッ、クミちゃん変わってんな」


「・・・え?」


「普通、頭の女なら“特別扱い”されたいもんだろ」


「そうなんですか?」


「だから、変わってる。もちろん良い意味でな?」


「だって」


「ん?」


「私が一番下っ端ですよ?」


「「「「ブッ」」」」


何気に選んだ言葉は厳ついさん達の壺にハマったらしく?
お腹を抱えて笑われることになった


「流石頭、女を見る目はピカイチっす」


誠司さんは私のトレーを厳ついさんの真ん中に運んでくれて


並んで昼食を取ることになった




もちろん

桐悟さんのとの馴れ初めやら
二人での様子まで


根掘り葉掘り聞かれたのは言うまでもなく


桐悟さんの居ない寂しさを紛らわせることが出来た