精神科の医師が来るまで、宏貴は何も言わずに恵理の体を抱きしめ続けていた。

怒ることも、あきれることも、諭すこともしない宏貴。
理由を聞こうともしない宏貴。

恵理はどんどんと不安になり、宏貴の顔を見る。

宏貴の胸の中で少し顔をあげると、宏貴が恵理の方を見た。

それでも何も言わない。

ただ・・・

宏貴は今までに見たことのない表情をしている。

悲しそうな、寂しそうな、でもどうしたらいいかわからないような顔。

恵理はそんな顔をさせてしまっている自分が、もう宏貴と一緒にいる資格はないと思った。