わかってる。宏貴は自分の体調が心配だから急いでいる。

でも・・・素直になれない恵理の心が疑ってしまう。

恵理は余計なことを考えなくて済むように、仕事に打ち込んだ。



作業がひと段落したころ時計をみるとすでに午後8時を過ぎていた。

体調を気遣ってくれていた宏貴。急いで帰ると言っていたのに・・・。

昼間の宏貴と店長の姿を思い出す。
肩を並べて、笑顔で話をする二人。
車の運転席と助手席に並んで座る二人。

恵理は悪い想像ばかり浮かんでくる思考を断ち切るように、勢いよく立ち上がるとヒールに履き替えてバックを持ち、フロアを出た。