「疲れた顔。これ直したら少し眠れ。」
宏貴が恵理の頬に触れる。

その触れ方には愛がこもっていて、恵理は思わず照れそうになる。

「大丈夫。終わったら泥のように眠るから。」
「そうだな。うまいもん食べて、ゆっくり眠って、打ち上げしような。」
「うん」
宏貴の前でだけ見せる恵理の、力の抜けた表情。

二人は付き合って6年が過ぎた。
大学を卒業して、同じ会社に入社して、はじめは別の先輩から仕事を教わり、時々会社で開かれる飲み会で話をしたり、イベントで一緒に新人として裏方をする程度の関係だった。
むしろまだ、会社の中で何を担当するか決まっていなかった二人はライバル関係でもあった。

そんな二人の関係が変わったのは入社して2年目にはいり、担当も決まってペアを組んだ時からだった。