週末になると祖父母宅へ父が来て、遊んでくれる。
入院している母の元へは祖父母が毎日のように連れて行ってくれていた。

恵理にとっては入院している母よりも、父の方が距離を感じる存在だったことは今でも変わりない。
もうこの世にいない母よりも、生きている父の方が距離を感じてしまう。

その距離は幼いころから離れてる時間が長かったからだけじゃない。

幼い頃、恵理は見てしまった・・・。

母の病院から帰る父が、きれいな女性と一緒にどこかへ行く姿を。
いつも険しい表情をしていた父が、柔らかく微笑みかけるその女性に幼いころの恵理はやきもちをやいた。

そんな瞳で自分や母を見てほしい。

そう願ったのははじめだけだった。