「恵理、すまなかった。」
宏貴がどう話を進めたらいいか、恵理を落ち着かせられるか考えていると、恵理の父が口を開いた。

「・・・」
ピクリと恵理の体が反応する。

「お母さんのこと。恵理のこと。私は背を向けて逃げ出してしまった。今更父親ずらできないと思ってる。でも、一橋さんから連絡をもらって・・・いたたまれなくて・・・来てしまった。すまない。」
「・・・」
恵理が背中で泣いている。
宏貴はそっと恵理の手を握った。

「怖かった。ただただ怖かったんだ。母さんが死んでしまうことが。その変えようのない現実が。怖かったんだ。」
宏貴は恵理の手を握りながら父の話に聞き入る。