「いつか・・・」
「うん」
「いつか・・・また・・・私たちを選んで赤ちゃんが来てくれたら・・・うれしいなって。」
失った命は今も恵理の心に強く深くのこっている。

その存在は日に日に大きくなっているのは宏貴も同じだ。

大きな瞳に、今にも溢れそうな涙をためて笑顔を作る恵理の体を宏貴はすぐに抱きしめる。

「そうだな。」
言いたいことはたくさんある。
恵理は少なからず自分に対する遠慮や気遣いで仕事をやめようとしている部分もあるだろう。
なら、俺は全力で支えるから、もう少しやってみようと言いたい。
もっとうまく支えられれば、やめるという選択肢すら考えなかったかもしれない。
それでも次の言葉が口から出せないのは、失った命への罪悪感で今も恵理の心が崩れ、立ち直れないくらい危うい状態だと知っているからだ。