カラリとした風が吹く。

雲一つない青空の下、私と小さな子は時々空を見上げながら並んで進んでいた。


ウサギである私と、人間のような姿だけれど私ほどの大きさのこの子が出会って、もうだいぶ経ったのね。

今はたくさんの実が成る季節。
私の大好きな果実もたくさんある。

私とこの子は、今日も取れた実を分け合って食べるの。

時々この子は、落ちていた栗やどんぐりをじっと見つめていることがある。

そして嬉しそうにフワリと微笑むこの子を見ていると、私もとても嬉しくて、そばにいてなんだか幸せな気持ちになる。


今日はたくさん種を拾ったのね。

私たちのいるこの場所には草も木も生えていない。私たちがやってきた向こうから取ってきたのかしら?

土を払ったたくさんのその種やどんぐりを、その子は愛おしげに目を閉じて自分の頬に擦り、そして土ばかりの場所に埋める。

何も無いこの場所にも緑ができますようにと思ったのかもしれない。

きっと来年にはみるみる大きくなっていくわ。
あなたが強く想い願うなら、きっとこの辺りにもたくさんの緑が出来るでしょう。

私はあなたの願いが叶いますようにと想いを込めて、この子に頬ずりをする。
くすぐったさがあったのか、この子は笑いながら私に抱きついた。

きっとこれが『幸せ』なの。


あなたには本当に不思議な力があるから、振り返ればほら、あなたの植えた土の辺りからはもうフワリと緑の香りがする。
あなたの愛も、きっとこの地に芽生えた緑を見た相手に届くわ。


草や小さな実をともに食べ、ともに歩き続けた私たち。

これからまた寒くなっていくから、私たちのいられる限り、ともにいましょう。
あなたが私の隣で笑ってくれる限り…