「はー…

相変わらず空気がおいしいね。」





「帰ってきたって感じだな。」







高校を卒業して10年の月日が経った。

今でも私のとなりには、誰よりも愛しいこの人がいてくれる。








「…香純。…ほら、手。」







そう言って左手を差し出す彼に、私はニヤリと笑う。









「あれ〜?

いつもは外で手繋ぐのとか、恥ずかしがるくせに〜(笑)」





「うっせぇ。

そこ、段差あるだろ。」








からかって手を取ろうとしない私に痺れを切らし、無理やりその手を奪う桜河。

私が段差でコケないようにと、必死なのだ。




そんな彼の右手には、私のカバンや手土産が入った紙袋など、大量の荷物がさげられていて…