ここで冒頭に戻る。
 人生で初めて男性からそういうことに誘われた言葉はそれだった。あまりに突然な発言だったので空気の抜けたような声が肺から絞り出すように出た。それからのことはあまり覚えていない。緊張が全身をこわばらせて、凍っていた。
 ベッドに沈み込んだ手が社長にゆっくり縫い付けられる。私を見つめる瞳が普段の社長と違って、目を逸らせないでいた。吸い込まれて溶けてしまいそうだ。
「できるだけ優しくする…痛かったらつねって貰って構わない。」
 私がその言葉に反論しようと口を開いたが、その上から暖かい唇が重なった。すぐに離されてまた違う角度から何度も口づけされる。蕩けてしまいそうな感触に慣れずにただでさえどろどろしている思考がぐちゃぐちゃになる。
「ふっ…ぁ、…や、」
 絶え間なく降り注ぐそれに息が続かない。息をするのに精いっぱいだ。そんな私に気付いていないのか、それともわざとなのか、口づけがより深い物になる。舌を絡めとられれば言いようのない感覚が私を襲った。
「…やばいなこれは、想像以上だ。」
「え…あっ…」
 何が想像以上なのか、聞きたかったが滑り込んできた手に言葉が遮られた。すらりと伸びた長い指が私の体のラインを確かめるように走る。ただ撫でられているだけなのに、ぞくぞくしてしまう。
 下着のホックを外すと、いよいよ私を守るものは無くなってしまった。誰にも見せたことのない肌が、つい先日知り合ったばかりの社長に暴かれた。恥ずかしくて思わず手で胸を覆ったが、すぐに社長に止められる。
「そ、そんなに見ないで…」
「なぜだ。こんなに綺麗なのに…ほらここも。」
「ひゃ…!」
 社長が私の胸の先端を軽くはじく。強すぎる刺激に声が漏れた。そんなことお構いなしにしつこく責め続ける。
「あ…やぁ、…そんなとこ…!」
「こんなに喜んでいるのに。初めてとは思えないぐらい感じているじゃないか。」
「ほ、ほんとうにっ…初めてなんです…ぁ、あ!」
「ほらここもこんなに濡らして。」
「ぁあああ、ああっ!」
 いつのまにか片方の手が私の秘所に指を突き立てていた。ぐちゅぐちゅと音を鳴らしながら動く指に声が漏れる。自分の声と思えないほど甲高い声にさらに羞恥が募った。それでも指は止まらない。それどころか激しさを増していく。
「やぁ…やめてくだっ…ぁああ、ひゃ…!」
「こんなになっているのにやめられるわけないだろ。」
「で、でも…そこ、だ、だめ!…あぁああ!」
「…は、あんまり煽んないでくれ。我慢が…」
「なんかきちゃう…!きちゃいます!あぁ、こわいっ…!こわいです、あぁ!」
「ああ、いいぞ。そのままイけ。」
 社長の指が激しくなる。私の口からはもはや言語をなさないような声しか出てこない。嫌なはずなのに、社長から与えられる刺激に縋っている自分がいた。
「あ、あああ、ああああぁああっ!」
 下腹部が熱くなって、体がふわふわとした。ぴりぴりとした刺激の波が私を飲み込んでいる。これが世に言う「達する」ということなのだろうか。体が自分のものじゃないみたいだ。全身が火照ったように熱い。力が入らない。
「なあ…いいか。」
 やっとはっきりしてきた視界にはいつの間にかシャツを脱いでいた社長がいた。私の顔を心配そうにのぞき込んでいるが、その目にはいつもの社長はいない。まさに男性としての社長がそこにいた。
 ぴとりと、私の秘所に熱いものがあてられた。一度も男性を受け入れたことのない体にはひどく大きく感じる。
「いいか。」
 それでもちゃんと許可を取るあたり社長だ。私はなけなしの体力を使って首を縦に振った。