生きた心地がしないなんて、冗談のつもりだったのに。

 本気でこの状況に耐えられなくなってきた。

「そろそろ時間だから、席に着きなさい」

 新しい担任の加野先生がそう言いながら教室に入ってきたことで、私は少しだけ息ができたような気がした。

 それから加野先生が簡単に挨拶をして、体育館に行くように指示された。みんなが立ち始めると、私はすぐに星那のところに逃げた。

 いきなり抱きついても、星那はなにも言わないでくれた。そのまま深呼吸をして、心を落ち着かせる。星那の香りに、緊張でおかしくなりそうだったメンタルは、少しだけ回復した。

 遅れるわけにはいかないから、完全に戻れていなくても、離れることにした。そして私たちは並んで教室を出る。

「怖かった?」
「わかりきったことを聞かないでよ……もう、オーラみたいなのやばい。俺に関わるな、みたいな」
「遠くから見るだけでも凄かったから、あんな至近距離だと……」

 星那は言いながら想像したのか、身を震わせた。

 でも、想像で終わってしまうのが羨ましい。私はこれから最低一ヶ月、あの恐怖に耐えながら授業を受けたり、学校生活を送るわけだ。

 もう何度目かわからないため息をつく。

「最悪な未来しか見えない」

 星那はやっぱり言葉が見つからないようで、困ったように笑っていた。

「……ねえ、始業式って確か、出席番号順に並ぶよね」
「去年からそうだよね?」