そんなふうに言われて、促されると、頷くしかなかった。

「侑生君、お待たせ」

 しばらく気まずい空気が流れるかと思ったら、お姉ちゃんが車椅子を持ってきてくれた。

 久我君はお姉ちゃんに軽くお礼を言うと、お姉ちゃんに支えられながら、車椅子に乗る。

「……侑生、君?」

 私は一人、違うことに気を取られていた。

「なに? 織部さん」

 久我君は嬉しそうに返事をする。

 この反応は、普段からお姉ちゃんに名前呼びされているということでいいのか。

「いや、用があって呼んだわけじゃなくて」

 どうして気になったのかを説明するのは、気恥しかった。

 だけど、中途半端に言ったことで、久我君は続きを待っている。

 どうやって切り抜けるか考えていたら、お姉ちゃんが嫌な笑みを浮かべているのが視界に入った。

「真央、もしかしてヤキモチ?」
「ち、ちが……」

 否定しきれない自分がいた。

 お姉ちゃんと久我君が、そんなに親しくなっていたなんて、知らなかったから。

 モヤモヤするというか、なんと言うか。

「……違わない……」

 お姉ちゃんの顔も、久我君の反応も見れなくて、視線を逸らす。

 ひたすら、顔が熱い。

「真央、可愛い」
「やめてよ」