運命じゃない

昼休みが終わり私達は一旦、各自の教室に戻った。一旦、というのも、放課後また皆で集まりたいと私が言ったからだ。
(皆、優しくていい人達だ。これから皆と付き合っていく上で、この能力の事は話しておくべき、だよね。)
そう覚悟は決めても、やっぱり不安は残るもので。結局私は午後の授業に集中することは出来なかった。

三人が集まったのは翔の部屋だ。学校やファストフード店などでは他の人に聞かれる可能性があるからだ。
「で、話したいことって?」
1番に話を切り出したのは水原だった。
「実は、私、私」
運命の赤い糸が見えるの、そう言おうとして、声が出ない。果たして、皆はこの能力を受け入れてくれるのか、いや、それ以前に信じてくれるのか。一度考えてしまえば、不安はどんどん溢れて、私の心は完全に怖気付いてしまった。どうしよう、皆には知って欲しいのに、拒絶されるのがーー怖い。
「かな。」
「!」
そんな私の思考を遮ったのは翔の声だった。
「かな。俺にはかなが何を話そうとしているのか、何を怖がっているのかは分からない。けど、確かに言えることが一つだけある。」
「俺は、絶対にお前を嫌いになることは無い。」
「翔。」
「ちょっとー。俺はって何?俺はって。俺らはに訂正してくんない?」
少し不機嫌そうにそう言ったのは美咲だった。
「かな。私は自分の事かなの親友なんだって思ってる。かなはどう?」
少し眉を下げ私に美咲は問う。
そんなの
「私だって、美咲の事親友だと思ってる。」
この高校に入り、なかなかクラスに馴染めなかった私に初めて話しかけてくれたのも、クラスに馴染めるように私を引っ張ってくれたのも全部美咲だった。
「ならさ、もし、私に何かを秘密があって、それが世間では否定されるようなものだったとして、そしたらかなは私を嫌いになる?」
「ならない!!」
考えるよりも先にその言葉が出ていた。
「私が美咲に嫌いになるなんてありえない!」

「私だってそうだよ。私がかなを嫌いになるなんてありえない。」
とても、優しい声だった。お母さんの腕に包まれているようなそんな暖かく、優しい声。
「・・・・正直俺は今日出会ったばかりのお前を嫌わないと断言することは出来ない。」
そう言い放ったのは水原だった。それはそうだ。私も、この話を会ったばかりの水原にするのはどうかと思った。
「だが、俺は下らない事でその人間を嫌悪するようなつまらないマネはしない。」
水原の目はまっすぐ私を見ていた。私に真剣に向き合っていると分かる。
「なぁ、かな、俺達を信じて?」
その翔の言葉に私は再び覚悟を決めた。
「実は、私ー」


「・・・・・・・・・・・。」
私が話終わったあと、部屋には静かな空気が流れた。その空気を1番に切り裂いたのは水原だった。
「なんだ、そんな事にお前は悩んでいたのか。実に下らない。」
「え?」
慰めでもなんでもなく、本当に下らないと思っているのだろう。水原は呆れ顔をしていた。
「ちょ、奏多、お前なんでそんな普通なんだよ!」
「そうよ、信じないって訳じゃないけど、受け入れるの早過ぎない!?」