「好きです。私と付き合ってください!」

彼女の表情は真剣だ。
告白されるなら何も知らない誰かより、少し知る彼女がいいと思ったのはここ最近だ。
彼女の真剣な想いに僕も真剣に答える。

「僕も同じ気持ちだ。よろしくお願いします」

正座で深く頭を下げる。
すると彼女はまた声を出して笑った。


僕に彼女ができたという噂が広まるのは早かった。
今まで断ってきたのに何で、誰がと女の子達は噂した。
それでも僕と彼女は変わらない。
踊り場以外ではいつも通り話さなかった。
だけど何も変わらなかった訳では無い。
休日、毎週土曜日と日曜日は待ち合わせをして手を繋いで出かけた。

とても楽しかった。
家で過ごすよりも充実していた。
ここだけの話、僕のスマホのメモリは彼女の楽しそうな写真で埋まった。
色々な場所に行った。
美術館、植物園、水族館、映画館、遊園地、図書館…たまに手作り弁当を持って広い公園でピクニック。
彼女との楽しいは尽きなかった。

美術館では抽象的なものや、自由を表現したものを彼女は立ち止まって見ていた。

植物園では目立つ花より素朴に小さく控えめに咲いていた花を見つめていた。

水族館では目玉であるイルカショーより大きい水槽にいるたくさんの生き物や、ふわふわと泳ぐクラゲをどこか羨ましそうに見ていた。
ふれあい広場は苦手なように思えた。

映画は物語よりドキュメンタリーの方が好きだと言っていた。

遊園地はアトラクションには乗らず、敷地内を散歩し遠くからパレードを見て帰った。
人混みは大の苦手だが、来てみたかったのだと言っていた。

たくさんの施設に行ったが、図書館が1番好きなようだ。
コソコソと小さい声で互いに読んで面白かったものやおすすめの本を教えあって遅くなるまで語り合った。

人混みがすごいところが続いた時は広い公園に来てのんびりと過ごした。
日向ぼっこ、しりとり、その他色々。
もしかしたらピクニックが1番のびのびと過ごせたかもしれない。

そんな彼女との思い出が順調に増え続けたある日、彼女はいつもの踊り場には来なかった。
何か理由があるんだろうか、それとも彼女自身に何かあったのだろうか。
考えるよりも先に足が動いていた。
僕は彼女の教室へと向かった。

やはり僕が行くとざわつき始めた。
出入口の近くで談笑していた女の子に聞いた。