解っていてわざと聞いているのか。

むぅ。思いながら、律さんを見つめる。

「で?どうしてこんなにツヤツヤなんですか?」

言いながら、鼻先と鼻先がくっつく寸前まで、顔を寄せてくる律さんは、天使か悪魔か…

職場でサンプルとしてもらった、薄紫色のリップグロス。

ロッカーに置いてある鏡を確認しながら、そっとくちびるに乗せた。

薄紫だから、今つけているピンクベージュの口紅の上から塗っても違和感がない。

ツヤツヤが、足されたくちびるが恥ずかしくも嬉しくて。

「…律さんだけに、見てもらいたかったから…」

「……、」

素直な気持ちが溢れ出した、私のくちびるに、

「ん…」

またも落とされる、優しいキス。