今日の律さんの担当は、ケーキ。

律さんの独断と偏見で選んできてくれる約束で。

楽しみだなぁ。

思いながら、玄関のドアを開けた。

「……あ、」

思わずそんな声が漏れたのは、キッチンから流れてきただろう、お醤油とお砂糖が合わさった甘い香りのせい。

急いで靴を脱いで、キッチンへ駆け込んだ。

「おかえり」

とても大切で大好きなひとと結婚して、ココロから良かったと、ありがとうございます。と信じもしない神さまに祈るのはこんなとき。

「…律さん、ズルい…、私がおかえりを言いたかったのに」

そんな風に尖らせたくちびるに、

…ん…、

エプロン姿で近づいてきた律さんがそっと、キスを落としてくれる。

変わらずぬくい体温はくちびるからも流れ込む。

このぬくさが、何度も何度もこれからも。

私を包んでくれる。