頬に触れる、ぬくい体温。

繊細に動く指先はどこまでも優しい。

あぁ…律さんが帰って来てくれたんだなぁ。

そんな安心感はまた、私を眠りに誘う。

…詩さん。

……詩さん。

大切な人に、大切な感情を含ませた声で呼んで貰えることは、嬉しい、切ない。

ふたつの感情を私に連れてくる。

でも決して、“切ない”感情が現実になることはないのだと、たくさんの優しさや態度や仕草で痛いほどにいつも、わからせてくれる律さん。

くちびるに触れる柔らかな熱。

眠気と現実の狭間で、それでも律さんからキスされた嬉しさに、ニヤニヤしてしまう。

「あ、あなた寝たふりしているでしょう?はい、1回起きなさい」

じゃないとまた、キスするよ?

そんな誘惑に抗えるほどの忍耐力は、私にはあるはずもない。

詩さん、詩さん。

私を呼ぶ律さんの声をずっと聞いていたい。

できればこのまま、甘いキスなんぞ…